丹治ひこ太

こだいらまちづくり日記

なぜ差別するのか?長谷部先生の説から思うこと

 「ルック・オブ・サイレンス」の試写会に行ってきました。

 なぜ普通の人々が大虐殺に加担していくのかという問題は別に譲るとして、虐殺のきっかけが「共産主義者」というレッテル張りから始まったことに注目したいと思います。

 今や有名になってしまった長谷部先生は、なぜ人は差別をするのか、についてR・ポズナーを参考に、「情報費用を節約しようとする行動が差別につながる」と述べています。

 インドネシアの9月30日事件を例にすれば、その人に信仰心(イスラム)がないかどうかを正確に判断することのむずかしさを節約して、「共産主義者」というレッテルで判断してしまったというわけです(もちろん、だから殺していいという話とは別です)。

 僕は、はじめて法科大学院で、このロジックを聞いたときになんか無味乾燥なことを言っているなと思ってすっきりきませんでした。

 しかし、最近、ネット右翼と言われる方々やある国の首相の言動や、ヘイトスピーチを耳や目にするごとに、これらは情報費用を節約しようとしているのだなと実感するようになりました。

 要は、社会問題の単純な解決を求めているのだと思います。現在の社会状況はますます複雑になってきています。こうした中で正解を出すことは極めて難しい。複雑な社会を複雑に考えることが面倒だったり、複雑に考えるだけの知性を持ち合わせていたりしないと、情報費用を節約しようとしていきます。

 正しい答えを出すことはとても難しく、道のりは長いものです。しっかりと考えていきたいものです。

 たとえば、集団的自衛権によせていえば、味方の敵が敵なんていう単純な図式があるわけないでしょう。ある面では敵でもある面では味方かもしれない。

 それに、そもそも味方が常に正しいわけでなく味方の敵が正しいかもしれないし、味方に加担することが国益を損なうこともあるのです。

 そういう意味では、「同盟」ということも「情報費用の節約」の一種なのかもしれません。

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