丹治ひこ太

こだいらまちづくり日記

古の知恵とサブプライムローン問題

 これまで紹介した民法の条文に共通していえることは、ローマ法までさかのぼれる古い条文の知恵が残っているということです。おそらくその古い条文にも、さらに古くから積み重ねられてきた人間社会の知恵が込められているのでしょう。それは、浅はかな現代的な知恵とは違い、相当に確実なものに違いないと考えます。僕はそれを信用しています。そういう意味では僕は真の意味で「保守派」です。

 では、そうした知恵が条文から失われた悲劇を今日はご紹介します。

 民法466条1項前段には「債権は譲り渡すことができる。」とあります。実は、ローマ法では債権は譲り渡すことができなかったのですが、経済取引が盛んになり、不便とされ、こうした条文になってしまいました。原則不可能、例外可能という形ならまだいいでしょうが、ここには条文の元の姿が消え去ってしまっています。

 ローマ法では、債権は特定の貸す人と特定の借りる人とを結ぶ「法の鎖」(vinculum iuris)とされていたので、その二人から切り離してはいけないものでした。それが信用というものだということです。その信用の上にしか貸し借りは成立しないと考えていたのです。

 たとえば、こうした古の知恵を忘却したことのつけが、サブプライムローン問題で現出しました。見も知らない人たちの債権が切り売りされ金融証券に混ぜ込まれ、さらに世界中にばらまかれました。そこには信用のかけらも存在しないのです。疑心暗鬼が金融危機に発展していくのは当然です。

  僕たちが食べる食品もそういう観点から考えると面白いかもしれません。**さんが作ったほうれん草とか、そういうのは大切なことなのかもしれません。

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